『K』は女性だと確定した状態だ。 この状態で思いっきり男性をアピールした動画を投稿する。 とはいえ、コウジもモヤシっ子。 頼みの綱は低音ボイスのみ!「俺、超すごくない?」 謎の自信をつけてコウジは言う。 まぁ、クラスが騒然で『K』の話ばっかりだったみたいだから仕方ないか。「今の状態はなぁ、「『K』は女性である。」だ。そうではなく、俺達スポンサーの会社が求めているのは、「えー?『K』って性別どっちなの?」だ。今の状態に甘んじることなく今日は男バージョンを撮影する!」「俺の女装に魅了されていたのに?」「男を魅了するのは女バージョン。女を魅了するのが男バージョンだ。今回、女生徒は魅了できていたのか?多分魅了していたのは男共だけだろう?よって、男バージョンも撮影する。全世界の人間が『K』に魅了されるんだ」 全世界って言いすぎたかな?でもなんかコウジはちょっとやる気みたいだし、いいかっ。「そういうわけでの男バージョンでの撮影だ。‘男らしさ’という逞しさは出せないからなぁ。あ、今後っていうか、『K』をしている間は体を鍛えるなよ!下手に筋肉がついたら女バージョンの撮影が不可能になるからな」 予め言っておかないとなぁ。俺が一人でやってた頃と違ってやることが多い気がする。 モヤシっ子だしなぁ。いきなり布団とかはマズいよな。 頑張って残業を片付けてきましたサラリーマンにしようか?本当に女装ならアイディアが出るのになぁ。 スーツとかリクルート系はあったよな?それを着崩してっと、髪型も普段はかっちりしてるよ。でも疲れて乱れちゃった。みたいな風にして。キスマークはまだ早いか?15才だしな。せめて17才くらいになったら解禁かな? 歌うのは、懐かしいなぁ。クラッシックの『魔王』にするか。 ドイツ語っぽいし、今日も耳コピして下さい。「頑張ったんだから、サービスしてくれ!って感じで、新妻に迫る感じで目線を俺にくれ。俺というか、カメラな」 ***** 翌日は教室の中が混乱していた。「えー?『K』って女性だと思ってた。あんな色気で迫ってきたら困る」「歌はなんだアレ。日本語でも英語でもなくねー?」「『K』は男なのか?一昨日は超色っぽい脚を披露してくれたじゃねーか!」 という状況を俺はコウジに聞いた。 コレコレ。懐かしいなぁ。女は『K』は男!って言い張り
どうしたもんか、コウジはあんまり女装に乗り気じゃない。慣れるとストレス解消みたいになるんだけどな。「初『K』だし?まぁ、軽―くあいさつ程度に。そうだなぁ、チャイナドレス着とく?ハイヒールがいいな。昔、俺が履いたやつはサイズが合うか?スリットから生足がグッと出ると最高なんだが?」「ちょっと父さん?私が『S』の時は露出したら怒ったのに、何?コウジには露出させるの?」「男女の差だ!娘の柔肌を他の男に見せてなるもんか!」「コウジなら特に構わないとね?」「ま、まぁそう言う事だな。俺の時も相当露出してたよなぁ、懐かしい思い出だ」「これ着るの?」 いかん。サヤカ仕様でスリットが浅くなっている。今すぐに改装しなくては!「この服をコウジ仕様にちょっと直すから、ハイヒールの具合を見てて」 俺は超特急でチャイナドレスのスリットを深くした。これならば結構ギリギリ感が……。そして生足にハイヒール。完璧だ!「コウジは歌いながら道を遠くから俺の方に歩いてきてくれ。歩き方は、モデルウォーク的な?いちいち足を一直線上に出すみたいな歩き方。ああ、扇子なかったっけ?扇子で口元とか顔色とか隠しながらさあ。あ、メイクメイク!」「父さん久しぶりで楽しそうだな?」「サヤカも引退しちゃったしなぁ」「髪はお団子を二つつけたい。じゃーん、何故かあるんだよ。この家そういうわけで装着。おくれ毛みたいのもつけ毛があったはず」「きゃー!コウジってば可愛い!」「うん。多分、そのハイヒールで踏まれたいって男が世界に続出するわよ?」「それは嫌だな、気持ち悪い。ねーちゃんよく平気だったな?」「うーん、考え方かなぁ?自分が世界の中心とか結構いいように考えるのよ。面白いわよ?クラスメイトとかこの格好に踊らされて、愚かだなぁとか思ってた」「うわっ、ねーちゃんひでー!」「俺もそうだな。俺の行動で性別どっち?とか討論するクラスメート見て笑ってる感じだった」「父さんまで……」「あ、目線はカメラに挑戦的なのを頼むなー。因みにだ『K』としてうまく軌道に乗せて稼ぐまでいったら、スポンサーがつくだろ?多分、俺の会社ソニア以外無理だけど、報酬が出る」「マジかよ?それを早く言ってくれよ。俺、超頑張る!」 ゲンキンなやつだよ。報酬は家計になるんだけどな。いい肉食えよ! コウジの初・撮影。 歌は……古―い洋
コウジが高校デビューできる年齢になった。 サヤカが26才。俺だってなんだかよくわからないうちに50才?早くない? 俺は知らないが、サヤカには彼氏がいるらしい。 そりゃ、まぁサヤカの年齢を考えればいない方が心配になるってものだけど、いるっていうのも。ちょっとは挨拶に顔出せやぁ!って気になる今日この頃の俺なのです。 コウジにはちょっと問題があった。隔世遺伝?いったい誰の隔世遺伝なんだ?いわゆるムダ毛というものが……。 そんなものがあっては女装をした時に世の男性の心は鷲掴みにできないぞっ! そんなわけで、タヤカも連れてコウジと3人で美容医療を行っているところで施術を行ってもらう。保険適用外だろう。しかしだ。医師だって医師生命をかけての施術となるわけだから、下手にエステよりも信用はできる。世の中にSNSが蔓延している以上、ちょっとした口コミで医者の命も消えてなくなってしまう。恐ろしい世の中だよ。 ちなみに、今日もサヤカは右左衛門先生のところに通っている。ホットパンツで。サヤカももうホットパンツを履くような年齢じゃないと思うのだが、それを本人に言うとしばらく口をきいてくれなさそうだから、言わない。 コウジは医者の施術でツルッツルになった。「コレは……男としてどうなんだ?って気になるけど?」「まぁ気にしない気にしない!」 と、俺は言うが俺の方はこの料金は必要経費として会社に請求できるだろうかなどと考えていた。 コウジの撮影はいたって簡単。 ああ、男を撮影していると思うとどうして気が楽なんだろう? 露出だってギリッギリの所まで攻めていける。サヤカの露出など許さん!「コウジ、高校の学業も疎かにするなよ。そして高校ではひたすら地味に地味に過ごすんだ。いいな!」 コウジが了承してくれたので、俺は安心して『K』を作る事ができる。 『T』も『S』も重要だったのはその秘匿性。正体が全く分からないことに意味がある。年齢・性別など全てを公にはしない。「コウジ、いいか?『K』として活動することは俺の会社ソニアで契約書にサインをしたよな?もし、契約書に反するような行い、正体をばらしてまわるとかしたら、契約違反。当然違約金が発生する。莫大だ。そのことを肝に銘じて行動を慎むように、わかったな?」「しつっこいなぁ。わかったよ、なんのための変装なんだよ」 俺が
その後俺はスポンサーをしてもらっている会社に事情を説明。 『S』も長くは出来ない事。うちのサヤカが書家を目指している事。師事する方を探しているという事を話した。 サヤカの書家としての‘書いている姿’を動画で投稿すると伝え、『S』は今後フェードアウトさせると伝えた。 書家としての姿を5,6年投稿した後に、うちのコウジを今度は『K』として動画を投稿していくと伝えた。サヤカの書家としての動画での姿は『K』までのつなぎみたいなものだ。「わかった。書家についてだが、君が指導すればいいじゃないか?」「私など下手の横好きどころか、特に書が好きというわけでもありませんし、書家でもありません」「こちらでも探しておくが、見つからない場合は君が指導を…という事になると思うぞ?昔、上司に渡した書についてだが、上司曰く「肩の力が抜けていて、出来上がるのは良い書だと思った」らしい」 肩の力が抜けていた―――そりゃあ、歌いながら書を書くんですから。 俺がサヤカを指導となると、サヤカも難しい年頃だし、嫌がるだろうな。 家に帰って俺はスポンサーの会社との会話を全部伝えた。「父さん、それ5割以上の確率で父さんが指導者になるってやつよ?」「お前もそう思うか?俺も自分は書家じゃないし、書に興味も何もないって言い張ったんだがなぁ」「はぁ、父さんは今は中間管理職ってやつ?」「おそらくな」「それじゃあ断れないじゃない!スポンサーの会社が何か言ってくる前に書家の先生を探すわよ!」 そう言ってサヤカは自室でPCと掛け合っていた。 結局、最後に行き当たったのは寿司屋の暖簾に寿しと書いている人。寿司屋だからつまりは升田家。「暖簾に寿しって書いた書家を紹介してほしいんだけど?」「田中がいきなりどうした?」「将来的に書家をやるつもりよ。動画投稿に、顔出しにメディアOKの人に師事したいんだけど、なかなかいなくて……」「あのさぁ、うちの爺さんでよければ貸すけど?」「お爺さんは書家なの?」「ちっとは名が知れてるはずだけど、『升田右左衛門』」「嘘!書の世界じゃ超有名人よ?人間国宝『升田右左衛門』!その書は素晴らしいし、名前は右なの左なのって外国で話題になるらしいわよ」「そうだよな(笑)」「是非ともお願いします!」「ああ、爺さんに言っておく。脚が魅力の女の子が弟子入りしたいって
コウジは地味に6才だった…。 えーっと私と11歳差?それでもあり過ぎだと思うけど。「すまない!サヤカにはおそらくコウジが高校に入るまで、『S』を演(や)ってもらいたいと思う」「それなんだけど…母さんにはもう伝えたんだけど……言いにくいなぁ」「まさかっ…サヤカに変な虫がついたのか?」 変な虫って何よ?私だって彼氏の一人くらい欲しいわよ!誰も好き好んで独り身でいるわけじゃないわ!「そうじゃないわよ」 母さんがため息交じりで現れた。「サヤカは将来的に書家になりたいんですって。いいじゃない?最近は自分がなりたいものもわからずにニートって若者が多いのに、サヤカは立派だと思うわよ」「うっ、母さんが言うなら…」 父さんは相変わらず母さんに弱いなぁ。コウジが高校に入るまではあと8,9年?だと私はえーと、今17だからぁ。げっ、25,6才じゃないの?「父さん、私は25,6才まで『S』をやるの?」「書家になりたいんだろ?二十歳くらいでフェードアウトさせる。その代わりと言ってはなんだが、サヤカの書家としての姿の動画をアップしようと思う。どうだ?」 うーん、それなら年齢=彼氏ナシって事はなさそうだし、書家も出来そうだし、知名度も上がりそうだからオッケーかな?「動画がどうこうってのは師事しようと思ってる人との話し合いによるかな?堅物だったら、メディアは完全にシャットアウトな人だし」「そうか。それは大変だな。本社に掛け合って、動画投稿OK、顔出しOK、メディアOKの書家を探してもらおうか?」「そこはさぁ、やっぱり自分の好みの文字を書く人に師事したいのよね。自分でなんとかアクセスするわよ。ダメな時は父さんに頼る事にする」「そうか、わかった。いやぁ、子供子供だと思ってたのに、随分としっかりした子になっているんだなぁ」 何よ!自分だって結構、いやかなり好き勝手に高校・大学と生活してたの知ってるんだから! さて、私はこの文字が気に入ってるからとりあえずメールで連絡を取ってみよう。 離島での自給自足が原則?無理。次! 動画に投稿できるほどの達人なのか?ってバカにするのもほどほどにしてほしいわよ。投稿するのは自由じゃない。父さんのどうでもいい書なんてプレミア価格で500万近くの値がついたって聞いたけど?はぁー、時代錯誤すぎてイライラする。次! 投稿はいい。何故
今日は心に余裕があるなぁ。男バージョンでも撮ろうかな?…父さんに撮ってもらうんだけど。「サヤカの男装かぁ。うーん、ハスラーやる?」「ハスラーって何?」「ビリヤードする人。着崩した感のあるスーツで、次々とボールをポケットに落としていく。サラリーマンのアフターファイブ的な感じで」「ポケットに落とす?窃盗?」「あー、違う違う!ビリヤード台の穴の事を『ポケット』っていうんだ。で、1番から順番に歌いながら9番まで落としていく。カメラ目線は挑発的というか、挑戦的な感じで。「何でそんな姿勢でビリヤードって姿勢もありだ。参考までに昔、俺がやったDVDを見ろ」 へ~。なるほどね~。こりゃ、必要ないでしょって姿勢で打ってたりする。視聴者のためかな? 歌は昔の洋楽でいいかな?その方が雰囲気に合うし。 っていうかさぁ、何でこの家って何でもアリなの?「それは父さんもわからない。ボルダリング施設もPCで編集する場所も衣装を作成する場所もなんでもござれだ!」 本当になんでもあるのよねー。そして、ビリヤード台もあると。台っていうかその周りの施設全部。雰囲気からして、ビリヤードするお店だよね…。「スーツ着たけど、これでいい?」「着崩し過ぎだ!」 父さんによる修正がされた。「露出度が下がったんじゃない?」「サヤカはむやみやたらに露出をするんじゃない!」 ……自分は露出しまくってたクセに。 ま、父さんがプロデューサーだから言う事聞いてますけどね。******翌日の教室、女子の黄色い叫びが聞こえる。「昨日の『S』様見た?めっちゃ色気。スーツを着崩した感がイイよね!」「あれでビリヤードも上手いからすごいよ」「だよね!歌は上手いし、色気~!!」「『S』様は女かもしれないんだぜ?」「男かもしれないじゃん!」 私に色気ってあったんだ。「升田、感想なしか?」「ああ、男だし、脚がなかったからな」 脚かい! 今度はイライラするから女バージョン! 何でだろう?女バージョンだとストレス解消になるんだよね~。「サヤカ、なんか希望は?」「イライラするから、女バージョン!」「やっぱイライラすると女装がイイよなぁ。サヤカは違うけど」「あのバーでシャカシャカするやつやりたい!」「あれなぁ、地味に技術が必要でなぁ。やり方はネットで勉強しなさい。その間にいろいろ準